施策の有効性から環境問題を議論する視点

環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks)

環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks)

Amazonで売れていた本。
この本って再版だと記憶しています。前の版読めなかったので、購入しました。


読後感は、指摘で面白い部分は多いが、表題から誤解を生む可能性が高いなというもの。誤読とは「ほら環境問題なんて全部ウソで、課題などないのだ」と理解することです。残念ながらそういう趣旨の本ではありません。

環境問題のウソ

本書が指す「環境問題のウソ」とは大きく2つに分類されています。*1

  • 因果関係の誤り

課題とされる現象との因果関係が疑わしい(例:ダイオキシンの毒性(特に催奇形性))

  • 施策の非有効性

課題への施策が有効と言われているが、有効性は疑わしい(例:ペットボトルのリサイクル)

主として後者(施策の非有効性)について議論されるものが多い。このため、環境問題で指摘される課題は認めるものの施策の非有効性を指摘するのが主たる論調です。環境問題で施策を論じる視点は面白いです。読まれることをお奨めします。

本書の内容

本書の主張を「環境問題のウソ」という部分でざっとまとめると

  1. 現状のペットボトルリサイクルは非効率で、課題が多い
  2. ダイオキシンの毒性は報道されるほど高くない
  3. 地球温暖化対策としての京都議定書は効果が限定的*2

というとこですかね。後は「環境問題対策」を巡る政府の金の流れが既得権益を作り出し、言論的バイアスを生んでいるなどの話がまぶされています。

リクエス

読んでて気になった点は2点。


1点目。FACTとして提示される統計・図表のソース・用語が正確では無いため、読者が追えません。例えば、ペットボトルの再利用率を6%程度(3万t)としていますが、PETボトルリサイクル推進協会http://www.petbottle-rec.gr.jp/data/index.htmlを見る限り、28%(14万t)程度は再利用されています。施策の有効性を論じる場合、現状把握の資料についてもっと読者が追えるように参考資料の整理を求めたいです。


2点目。また統計から追えない部分で著者自身の試算が行われています。試算することは全く問題ありませんが、根拠提示が希薄なのが気になります。

*1:本書の中では一緒くたに議論されているため、正直誤読しやすい

*2:因果関係での議論も行われますが、多くは枝葉の議論。論調としては地球温暖化の議論は様々あるが、ここ100年程度で急激な気温上昇があることは課題として認識しているし、かつ二酸化炭素が温暖化の主要因であることは半分程度は認められるというスタンス