MSが死んだ件

「SAPとマイクロソフトSaaSの議論がなくなってほしいと思っている。両社はSaaSのサービスを提供しているが、よいサービスではない。『SaaSは使えない』とユーザーに思わせて、パッケージソフトウェアに戻らせることを考えているのではないか」


ガートナーのアナリストの話。「マイクロソフトは死んだ」の件についてのインタビューの模様。しかしエンタープライズ向け製品(SAP)とオフィス製品(MS)を一緒くたに論じるのは少し雑に過ぎる。


SAASを提供するに当たり、どこまで利用者間で機能を共有化出来るかは避けがたい論点。一般には共有化と親和性の高いアプリケーションではSAASが主流になっていくと思われる。


エンタープライズ向けは基幹であれば法人固有のカスタマイズ比率が高いため、サービスの共有化は単純には行かない。*1一方でsalesforceなどのSFAと呼ばれるジャンルは共有化が比較的容易であるため成功している。
オフィス製品の方は共有化が用意であるため、SAASとの親和性は高いだろう。

MSが投資先としていけてないのは市場はとうに判ってる

そもそも話のきっかけになった「マイクロソフトは死んだ」だが、

数日前、私は突然マイクロソフトが死んだのを実感した。

から始まる Paul Grahamの文章。
表現は「死んだ」だけど、要は「スタートアップ企業がMSを恐れなくなった」ということらしい。時期は2000年代中盤に発生した4つの現象(google,ajax,ブロードバンド,apple OSX)が原因だという。


あえて言われると、どうも違和感がある。
市場はそんなこととっくに判ってるのではないですか?市場からの期待を測る一つの指標としてPERを見てみると、2007年4月21日時点で

社名 PER link
MS 24.80 http://finance.yahoo.com/q?s=msft
oracle 25.37 http://finance.yahoo.com/q?s=ORCL
apple 32.9 http://finance.yahoo.com/q?s=AAPL
google 48.53 http://finance.yahoo.com/q?s=goog
yahoo 53.84 http://finance.yahoo.com/q?s=YHOO


明らかにMS,oracle,SAPなどのソフトウェアの巨人は25前後で固まっているし、googleは50弱と大きな差がある。yahooの値が微妙。

更にMSの2000年代の株価を見ると2000年には既に頭打ち。*2

*1:一方で基幹系の共同化という観点では、SAASとは違うものの日本の銀行業界ではすさまじい勢いで進んでいる。共同化スキームは様々あるが、もっとも急進的なのは八十二銀行IBMを中心とした「じゅうだん会」のスキーム。誤解を招く言い方かもしれないが、端的に言えば八十二銀行の実装が正で他行はその実装に業務を合わせていく。各行の要望は八十二銀行を説得できた場合のみ対応される。採用の可否はコスト削減とのトレードオフとしてこれを飲めるかに掛かっている。

*2:yahoo financeでPERの時系列の追い方ってどうやれば判るの?