日本のコンテンツ産業は世界平均以下?そんなヤバイ状況なの?

 −−政府はアニメ、コミック、映画、ゲームなどのコンテンツを輸出して収益を上げようとしているが
 「切り込み隊長として活用しようということだ。(中略)
ゲームについては、ぼくは異論がある。アニメや漫画は感動をもたらすけれど、ゲームは、お金だけ持っていって、子供の時間奪ってますね。その人生にプラスアルファがない。」

ゲームの件は色々言いたいが、置いておくとして・・・
数年前から日本政府はコンテンツビジネスに力点を置いている。
平成15年に内閣の知的財産戦略本部にコンテンツ専門調査会が設置。
現在コンテンツビジネスの振興検討のために活動している。
目指すは「コンテンツ大国」らしい。


活動内容はHPで確認出来る。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/index.html

ざっと活動報告を読んでみると国内消費の拡大、業界全体の改善、国外への輸出など全方位的な対策を考えているようだ。*1
中には契約整備など興味深い施策も含まれている。


活動内容の評価は以下が参考になった。
http://www.glocom.ac.jp/j/publications/2005/06/post_22.html

世界平均にも及ばない?

しかしそもそも日本コンテンツビジネスは振興を図らなければならない状況なのだろうか?
報告書より現状認識を抜粋する。

我が国コンテンツビジネスの事業規模は総額として11兆円台を推移しているものの,近年はやや下降気味である。対GDPで比較した場合,米国の5%に対し日本は2%で,国際平均の3%をも下回っている。(中略)
このように我が国では,すぐれたコンテンツの魅力をビジネスにおいて十分にいかしきれていないのが現状である。


日本の対GDP比コンテンツビジネス規模は世界平均以下なのだそうだ。
本当なのだろうか?
音楽・映画・ゲームなどの売上伸び率は頭打ちだが、日本が世界の平均以下とは俄には信じがたい。
報告書資料では下記が記載されている。*2

国名 GDP(兆円) コンテンツ市場(兆円) コンテンツ市場/GDP
日本 516 12 2.3%
アメリ 1308 60 4.6%
世界平均 4380 144 3.3%

*3


根拠になっている資料はPricewaterhouseCoopers,”Global Entertainment and Media Outlook:2004-2008らしい。入手できなかったものの、他HPで同ソースから引用される数字を見ると大幅に違う数字が使われている。
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/contents.aspx?n=MMITbb064019072005

この数字を元にアメリカ、日本、欧州、などで比較すると

国名 GDP(兆円) コンテンツ市場(兆円) コンテンツ市場/GDP
日本 554 11 1.95%
アメリ 1,406 34 2.41%
イギリス 255 5 2.12%
ドイツ 328 5 1.52%
フランス 245 3 1.35%
中国 230 2 0.78%
韓国 83 1 1.44%

*4


アメリカはコンテンツビジネスがやや突出しているものの、日欧は同レベルのようだ。
この比率であれば、感覚的に納得出来る。

コンテンツ大国?

報告書に盛り込まれる数字データは極端に少なく、上記対GDP比コンテンツ市場規模は報告書の現状把握のベースとなる数字。FACTの少なさも寂しい限りだが、その数字も真偽も怪しいそう。


なぜ国内コンテンツ市場規模は拡大しないのか?どうすれば拡大可能なのか?という当たり前の疑問に答える地道な検討こそ「コンテンツ大国」になるには必要なのだろう。


資料を読んでも彼らの目指す「コンテンツ大国」なるものがどんな大国なのかさっぱり判らないのだけれども。

コミケへの全国民強制参加とかする大国なんですかね?
コンテンツファシズムには断固反対!

*1:残念ながら現状認識は曖昧なため課題が見えず、施策も全方位のため読んでいると何がしたいのかわからないというダメの典型

*2:ドルベースで記載を1USD=120JPYで試算。比率を求める上で影響は無い。以下同様

*3:報告書記載では2003年ベース

*4:資料公開が2005年であったため、GDPは当時最新の2004年ベースで試算